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越後の國の讃岐うどん房 鶴越(つるこし)公式ブログ

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富士吉田うどん食べ歩き初体験

富士吉田うどん食べ歩き初体験_c0092877_2221975.jpg富士吉田の丸新さんとミクシィのやりとりをしていて小麦粉の種類や特性をいずれ情報交換しましょう、というような話になってたまらなく吉田に行きたくなって、翌朝7時過ぎに出発。

午前10時の大月はピリピリするような寒風。気持ちの良い晴天だ。
丸新さんは前夜遅くなって、そういうことならぜひどうぞ!と快く案内を引き受けてくださって、富士急の寿駅でコンタクト。

自己紹介もそこそこに駅から2分の「みうら」へ。
こちらは吉田うどんの総本家的なお店で昔ながらのスタイルを守っておられるということ。
「おぉ日曜に開いてるなんてっ!」と丸新さんがおっしゃるくらいだから、きっと滅多にないラッキーなんだろう。讃岐に続いてこれは幸先良し。
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解説によれば特たけを使っているこの麺は外皮に近い部分まで粉にしているために、独特の黒さが出てきているということ。この麺は長い!簡単につゆの椀に持っていくのがなかなか難しい。

汁は味噌と醤油を合わせたもので仕上げてあり、お揚げを刻んで浮かしてある。
このお汁が旨い。普通にお汁として単独のものとしておいしい。
これに盛り放題になっている天かすを投入して一口。
麺だけで食べるとかなり塩分を感じ、硬さも半端ではないが、それがそういう存在としてきちんと受け止められるものになっている。
熱いお汁に入れると締まっていた麺がシュッと緩み、しなやかさが出てきてちょうど良くおいしいタイミングが生まれてくる。

富士吉田うどん食べ歩き初体験_c0092877_22343197.jpg
二軒目は富士山にまっすぐ向かう昔からの富士山信仰の人たちが歩いた参道にある「はなや」さん。こちらは店の玄関から座敷に上がると20人くらいが座れるようになっている。
ここで注文をするのは「湯もり」が良いとのこと。

釜揚げの上に花カツオと小松菜がのっている。
これに生醤油を回しかけていただく。生醤油でなければテーブルにある「擂り種」と呼ばれる唐辛子味噌を入れていただくらしい。
僕は醤油を入れてほんのり塩味をつけたあとに、この練りを多めに入れていただいた。
練りはゴマと味噌が入っているので、とても風味が豊かで釜揚げの茹で汁が断然おいしくなる。そのまま食べてもおいしい。

麺は柔らかめでさっくりとした歯ざわり。
前の一軒と比較すると、まったく別物の優しいうどんである。
殊更にプリプリ感を強調するのがここの流儀ではないようなので、家庭でばあちゃんが作ってくれたうどん、という感じがする。

青味はほうれん草のようだが、小松菜。
これが伝統的なトッピングという話を丸新さんから聞く。
地場で豊富に採れる菜類ということもあるだろうと思われた。
お茶請けに出てきた野沢菜漬けが実は格別においしかった。
気温が低く、水が冷たいところで漬けられる野沢菜漬けは絶対おいしいというのはここでも間違いない。

「けっこう腹に溜まりますよね~!普段こんなに一度に食べないから…」と丸新さんが言っているが、それは自分も同じことで硬めでどっしりとしたうどんは腹に溜まる。徐々にボディブローが効いてくる感じがする。
讃岐の食べ歩きみたいに半日で5杯とかここではかなり難しいと思われた。
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苦しくなりつつ最後に入ったのは元金融マンのご主人が脱サラで始めたお店「しんたく」さん。All aboutのうどんガイド蓮見氏が来て「史上最強の吉田うどん」と太鼓判を押して帰られたという新進気鋭の一店だということ。
オーダーは「冷やし梅おろし」が絶対おすすめです、ということで出てくるのを待つ。

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来たうどんは前2軒と違って、透明感がある。
粉は雀らしいのだが、口にしてビックリした。
All aboutでの蓮見氏のレポートにもある「噛み締めると歯の間でギシっという音がするような硬さ」というのがよく分かるほどの硬さ。
茹で時間が極端に短いのではないかと想像するが、厨房を見ているわけではないので分からない。鍛え方もかなりしっかりと行われているのだろう。

店内には「柔らかいうどんもあります。お申し付けください。」とあるので、硬くて馴染めないでクレームをつけていく人も多分いるのだろうと想像される。

練り梅の爽やかな風味とちょっと濃い目に仕込まれたカツオ出汁がすりゴマと相まっておいしい。天かすの油が汁に馴染んできたあたりはちょっとまったりしてきてこれが良い。
麺はもちろんのことだが、出汁がおいしいと麺がとても引き立つ。
一度食べたら絶対一生忘れない味だった。これはすごく大事なことではないだろうか?

いろんな土地に根付いたうどんがあるというのを讃岐に引き続き、吉田に来て食べてみて、奥深さを感じる。
確かに好みかそうでないかというのは個人差があるので、絶対にここのうどんが良い、ということはラーメンの日本一を決めることが無意味なようにうどんの日本一もないと思う。
生まれた時から身体が覚えてきた味は絶対のもので、その時にはおいしいともまずいとも思っていなかったものがある一線を超えた時に懐かしくておいしくてたまらない味になってくる。
ご馳走は一度食べれば毎日食べなくても満足できるが、毎日食べたいものは続けて食べても飽きない滋味のあるものであることが多いから。
きっとうどんも同じように刺激的な味は全国に数々あれど、究極本当に食べたいものは味の原体験に基づいているものだと思っている。だから、日本に一つだけのおいしいうどんもないと思っている。

讃岐、吉田に共通して感じたことは「小麦粉の風味を大切にしているところは繁盛している」ということ。小麦がどんな味を出しているから、この出汁というように食べ方の工夫などをきちんとしているところに自ずと人が集まってきているのではないか。
また、単価が安く気軽に家族で食べに来ることができる。平均して一杯¥300~¥350。
お腹に溜まるので、三玉、四玉と食べるものでもなさそうだ。
ただ、冷たいのと熱いのを並べて食べる人はここにもいるらしい。

この吉田うどんを世間に認知させる一翼を担ってきた丸新さん。
地道に吉田のうどんの本当のおいしさを広く知ってもらおうと努力を重ねておられる。
その力と粘り強さに驚かされたまま、川崎への帰路に着いた。

どんなうどんを作ってどんなふうに食べて欲しいんだろうなぁと自分に重ね合わせながら、電車に揺られて帰ってきた。感慨深い一日だった。(丸新さん本当にありがとう。)
by up-jp | 2007-01-08 23:08 | うどん店

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